2017.02.13 UP

第7回東京アンデパンダン展 人気投票上位者展
飴色団栗研究室 個展「未知の収集」

201703_ex_ameiro
会期:
2017.3.14 tue - 3.23 thu 月曜休廊
入場料:
無料
主催:
EARTH+GALLERY
時間:
11:00-19:00 ※最終日17:00まで

未知なる標本の蒐集

渡辺進と渡辺萌由は、ともに富山大学芸術文化学部を卒業した後、2014年に結婚し、それを機に夫婦でアートユニットを結成した。2015 年から研究室兼アトリエ「飴色団栗研究室」(あめいろどんぐりけんきゅうしつ)として、あるとも知れない森や遺跡を(空想の中で)巡っては、不思議で面白いものを採集(制作)し、それらを標本箱に収めたり、試験管などで培養しようとしたり、往時の姿に復元しようとしたりする活動を続けている。

彼らは、こうした標本の制作行為を「造形」とは呼ばず、「未知の収集」と呼んでいる。それは、作家が芸術目的で見いだした筈の「未知のもの」の標本について、「木を削って塗装する」とか、「粘土をこねて色を塗る」と表現してしまうと、忽ち作りも のとしか思えなくなってしまうからだ。彼らにとって、素材から標本を造り出す作業は、自らの精神の内から掘り出した発掘物を、皆の目に見えるよう実体化する営為に他ならないのである。

例えば「種花」は、葉もなく、根も出さず、種から茎と花のみが伸びる植物が、高さ12cmの試験管に入れられた標本である。 様々な形の花を咲かせるので、植物の種子を信仰する古い文明の「花の遺跡」で占いに使われていたという。「母岩草」は、「星 の洞窟」に自生する浮遊性の水草の浮き部分であり、中には水晶のような結晶が育っている。「加飾飴色団栗〈種護〉」は、とろけた飴のように甘く輝く「飴団栗」に、かつて「花の遺跡」で種子を守るために描かれていた紋様を、漆で蒔絵を施して再現 したものだ。

ドイツの美術家 ヨーゼフボイス(1921~1986 年)はかつて、木製の箱やガラスの展示ケース(ヴィトリーヌ)を、工業製品 等を自らの芸術作品として提示するための装置として用いたが、飴色団栗研究室は、自らの制作物をあたかも客観的な標本物で あるかの様に提示するために用いている。こうした装置としての箱やヴィトリーヌがアート・インスタレーションの重要な一部を成していることは、彼らの制作・展示の在り方もまた、美術史的発展の上に生まれてきたものとして捉えることができるだろう。

斬新な制作コンセプトと、作品が有する風合いが、多くの観客を魅了した結果、「飴色団栗研究室」は、2015 年の「第6回 東京アンデパンダン」に続き、2016 年の「第7回東京アンデパンダン」でも、観客による人気投票「入札アンデパンダン」の得票数第1 位に輝いて、2 年連続で個展開催の機会を得た。また、2017 年9月には、MoMA PS1(ニューヨーク近代美術館のコンテンポラリーアート専門のアートスペース)で開催されるニューヨーク・アートブック・フェアにも出品予定である。

今回の個展では、ギャラリー一階の壁面に、多くの標本箱を博物館の様に展示するするとともに、中二階のカフェスペースでは、観客が、未知なる標本を採集するための鞄や、蒐集された標本コレクションに取り囲まれながら喫茶できるようにする予定である。こうした好事家の思いが詰まったコレクション・スペースは、筆者にとってもとても居心地の良い空間だ。折角の機会 なので、筆者もコーヒーのアロマに包まれて、観客の皆様と共に、しばし至福の時を過ごそうと思う。

深瀬記念視覚芸術保存基金代表 深瀬鋭一郎

3 月18 日(土)18:00~ 
レセプションパーティーを開催いたします。皆様お誘い合わせの上お気軽にご参加下さい。(参加無料)

2017_ex_「小さな未知の収集」

「小さな未知の収集」 ミクストメディア/2016







飴色団栗研究室とは


 情緒のない言い方が許されるならば、「架空の植物や発掘物を標本調に仕立てたアート作品の制作」というのが、飴色団栗研究室の活動を、最も分かりやすく、そして最もつまらなく表現する文句であろう。

 アートユニットである飴色団栗研究室の「研究員」は、そのような表現を決して使わない。あくまでも「採集してきた植物を標本にしている」と言うのだ。「標本を芸術として楽しめるよう美しく仕立てる活動をしているが、中身については我々が森から採ってきたものだ」と。

 なぜ、そのような表現を使うのか。それは、「標本」の制作者である研究員が「架空である」と表現してしまえば、それは誰にとっても架空でしかありえないものとなってしまうからだ。

 世界には、不思議なものが数え切れないほど存在する。もちろん我々の身近なところにも、少し視点を変えるだけで不思議で魅力的なものが溢れていることに気づくだろう。世界は、人智で計れるものだけが全てではない。むしろ計り知れないことの方がずっと多いと言える。

 そんな事実を、我々は「慣れ」と「思い込み」によって忘れていないだろうか。 毎日目にするものを「当たり前」「つまらない」と思い込み、その奥深くに存在する魅力を、不思議を、ないものとして定めてはいないだろうか。

 研究員が採集に向かうという「世界の奥の森」は、身の回りに潜む「奥深く」が顕著に表れる地である。つまり、見るからに不思議なもので溢れている地と言って良い。

 そんな森から採ってきた、世にも不思議な植物や遺跡の発掘物を目にすることで、日常の中の「奥深く」の存在も思い出してほしい。

 飴色団栗研究室の標本は本来、特別なものではないのだ。我々がただ、そこにあるものの、深い部分に目を向ければ良い。ただそれだけだ。

〈略歴・活動歴〉

夫の渡邉進は新潟県、妻の渡邉萌由は福岡県と離れた地で育ったが、双方とも富山大学 芸術文化学部へと進学したことで出会う。渡邉進は漆工芸の伝統技法を、渡邉萌由は金属 工芸の鍛金という技法の中でも、比較的現代的な表現方法を学んだ。 共に富山大学を卒業後は離れた場所に就職したが、2014 年の結婚を機にアートユニット を結成。福島県にて活動を開始する。工芸家としての、細部まで緻密に完成度を高める技 術を生かしながら、生活に根ざした「使えるもの」を作る工芸から離れ、子供心を思い出 させるような「夢と不思議」に溢れる作品を探求し続けている。

2014 結婚を機に活動開始
2015 個展「博士の標本箱」、「第6回東京アンデパンダン展」人気投票第1位、展示即売会「daydream」出展(大阪)
2016 個展「春の森、竜の寝息」EARTH+GALLERY(東京)、 個展「屋根裏部屋と春の森」ギャラリーカフェテオ(名古屋)、個展「妖精の棲家」海福雑貨(神奈川)、「第7回東京アンデパンダン展」人気投票第1位